ヘリコプターを使った救急医療活動は世界中でおこなわれています。一般にはヘリコプター救急、
英語ではAir Ambulance もしくは HEMS(Helicopter Emergency Medical Service) と呼んでいますが、特に日本では医師がヘリコプターに乗って患者さんのもとへ駆けつけるという点を強調して
「ドクターヘリ」と名づけられました。この呼び名は、外国人から見ても分かりやすいと好評です。
さて、ドクターヘリの基本的な要件は、医療機器を装備し医薬品を搭載したヘリコプターを使い、
病院の敷地内に待機していて、出動要請が出るや医師と看護師が乗って数分以内に離陸し、救急現場
へ急ぎます。そして患者さんのそばに着陸し、その場でけが人や急病人を治療し、病状に適した医療
施設へ患者さんを搬送するシステムです。
したがって救急車のように患者さんを搬送するだけが任務ではありません。むしろ医師と看護師の
医療スタッフをいち早く救急現場へ送りこむことが重要な役割です。
このことによって治療開始を早めることになりますから、重体の患者さんの命を取りとめたり、治癒までの期間を短縮することができます。HEM-Netの調査では、従来の地上救急にくらべて救命率は3割以上向上し、完全に治って社会復帰のできた人は1.5倍に達しております。
このように、すぐれた救命効果を発揮するドクターヘリですが、日本ではまだ全国に普及するとこ
ろまではゆきません。理由のひとつは、1機について年間2億円ほどの運営費がかかるためです。む
ろん患者さん個人に負担がかかるようなことはなく、すべて国と自治体が負担しています。この負担
金をいかにして捻出するかが、今後のドクターヘリ普及の鍵でもあります。
ただし、念のためにつけ加えますと、1機2億円で全国50ヵ所に配備するとして年間総額100億円。
日本人1人あたりにすれば80円でしかありません。わずかこれだけの費用で年間およそ25,000人がヘリコプターで救護され、そのうち3割以上の人が命を落とさずにすむのです。